伝統工芸を救えるのはYouTube

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断言します。

日本の伝統工芸品を救えるのはYouTubeです。

なぜそう言い切れるのかこれからご説明したいと思います。理解を深めていただくためにも、全て読んで欲しいところですが、前置きが長いので、タイトルの事が知りたい方は、目次の3.から飛んでください。

 

伝統工芸品とは

伝統工芸品とは、経済産業大臣が指定した日本の工芸品の事をいい、日本全国で232品目(2019年1月現在)が指定されています。

 

指定条件

1.主として日常生活の用に供されるもの

一般の方が日常生活に使用する工芸品でなければなりません。日常生活に関する工芸ですので、その範囲はかなり広く、冠婚葬祭、節句など年に数回しか行わない行事でも、日本人の生活に密着し一般家庭で使われているものであればそれも含まれます。

また、人形や置物も日々の生活に安らぎと潤いをもたらすということで、「日常生活の用に供されるもの」と考えられます。とは言え、安価な品物で入手が容易であることを意味するものではありません。

 

2.製造工程の主要部分は手工業的であること

機械化によって失われつつある、熟練の職人の技術、持ち味を継承するため、全工程を機械で作ったものは、伝統工芸品とは言えませんが、デザイン、形状などの主要部分が高度な手仕事であれば伝統工芸品と言えます。ですから補助的な道具を使うのは全く問題ありません。むしろその方が、生産性や品質が保たれます。

 

3.伝統的な技術や技法によって製造されたもの

原則として、製造する技術または技法が100年以上の歴史を有し、今日まで継続している必要がありますが、技術や技法は、時代によって変化し改善されていくものですから、あまりにも伝統から逸脱していない限り支障はありません。

 

4.伝統的に使用されてきた原材料であること

これも、(3)と同じ原則で、100年以上の歴史と今日まで継続している必要があります。しかしながら、原材料は、枯渇してしまい採れなくなることや後継者不足で原料が作れず入手困難な場合もあり、既にそういったことに直面している産地もあります。

そのため、産地の持ち味を損ねない程度であれば、同系統の原材料を他の産地から仕入れても構いません。陶磁器で例えると、原料の陶石が採れなくなり、やむを得ず他の磁器産地のものを使う場合など。

 

5.一定の地域で産地形成されていること

原則として、10企業以上若しくは30人以上の従事者が必要ですので、一定の地域においてあまりにも企業数、従事者数が少ないところは含まれません。つまり、地場産業として成立しており、製造に携わる人が多い地域でなければなりません。

 

なんちゃって伝統工芸品

まぁいろいろと条件が定められていますが、これは作り手の裁量に委ねられるでしょうね。ひとたび伝統工芸品の指定を受ければ、その後、事業所が条件を守ろうが守らなかろうが、何かしらの処分を受けることはありません。そもそも条件自体が曖昧なんですよね。

 

まずは、(2)についてですが「ここまでは大丈夫」というような明確な定義が決められている訳ではないので、90%機械で作っていて残りがたったの10%でもそれが主要部分であれば、条件を満たしていることになってしまいます。

(3)は、あってないようなものです。みんながみんな伝統技術を親子代々継承している訳でもないですし、独学で技術を身に付けた人も少なからずいます。砥部焼なんて数十年前に一度廃れた産地ですから、完全に継承されているとは言い難いです。

(4)は、陶磁器に関してですが、自分の地域で採れる原材料が枯渇していないにもかかわらず、他の産地から仕入れているところもあります。なぜそんなことをするのか。理由は様々ですが、一番は原料の価格が地元のものより安いからでしょう。これはセンシティブな問題ですので、この位でとどめておきます。

 

・機械なのか、手仕事なのか

・伝統的な技術・技法なのか、自己流なのか

・原材料はその土地のものなのか、そうでないのか

 

上記のことを見分けるのはプロでも容易ではありません。以前、当社の商品(手仕事)を、とある有名産地のプロの方にお見せしたのですが「うん!これは機械だ!」と言われましたからね。「機械のように精巧だ!」なら嬉しいですけれども……

私がYouTubeで制作風景を投稿し続けているのは、もう二度とそんなことを言われたくないからでもあります。「あれはなんちゃって伝統工芸品」だと言われないよう、頑張らないといけませんね。

 

伝統工芸品の種類

<代表的な伝統工芸品の種類>※指定品目が多い順

織物…「西陣織」「博多織」など38品目

木工・竹工品…「大阪欄間」「箱根寄木細工」など32品目

陶磁器…「有田焼」「美濃焼」など31品目

漆器…「輪島塗」「京漆器」など23品目

仏壇仏具…「彦根仏壇」「尾張仏具」など17品目

金工品…「南部鉄器」「山形鋳物」など16品目

文具…「熊野筆」「播州そろばん」など10品目

和紙…「土佐和紙」「越前和紙」など9品目

 

指定品目が多い都道府県は?

最も多いのは、京都府、東京都の17品目で、新潟県、沖縄県の16品目、愛知県の14品目と続きます。

ちなみに地元の愛媛は、砥部焼と大洲和紙の2品目が指定されています。「そんなもんだっけ!?」と思われるかもしれませんが、国指定の伝統工芸品は、要件が厳しいため少ないです。県指定のものなら28品目もあるので、将来的に国指定のものが増えればいいですね。

 

伝統工芸の現状

みなさんは、伝統工芸品を使っていますか?

恐らくほとんどの方が「使っていない」と答えると思います。それもそのはずで、伝統工芸品の生産額は、1983年の5,410億円をピークに下がり続け、2015年には、1,020億円まで落ち込んでいます。従事者数も、1979年にピークを迎え28.8万人から、2015には、6.5万人にまで減っております。

(数字は、㈶伝統的工芸品産業振興協会資料より)

 

ではなぜ、ここまで落ち込んでしまったのかを考えていきたいと思います。

<需要の低迷>

最近は、漆器も陶磁器も家具もホームセンターなどで低価格で売られています。それは、機械による大量生産でコストを抑えられるためです。伝統工芸品は、技術を習得するのに何十年もの時間が掛かりますし、とても複雑な工程を経てようやく完成します。

生産者の立場からすれば、それほど時間と労力をかけて作ったものを、安価で売るなんてことはできません。当然ながら、伝統工芸品を作っている人たちは、ボランティアでやっているんじゃなく、ものを作って、それを売って生計を立てているのですから、少しでも高く売らないと生活できません。

 

でも、今の日本は、人口が減少していて景気も悪いです。普通に生活していると、家賃、食費、水道光熱費、交通費、税金等で、かなりの額が消えていきます。ですから、伝統工芸品なんかにお金使うくらいなら、適当にホームセンターで揃えて、残ったお金で「美味しいものを食べよう」と思う方が大半でしょう。私も逆の立場なら、絶対そう考えると思います。

 

また、ライフスタイルも年々変わってきています。一人暮らしの方なんかは、外食、スーパーの総菜、コンビニ弁当などで済ますことが多いですよね。その場合、わざわざプラスチック製の容器から食器に移し替えるなんてことはしないと思います。

着物を着たり、和傘を使ったりする機会もほとんどありません。そもそも今は、モノを所有する時代からシェアする時代に変わりつつありますし、モノを持たない暮らしをする「ミニマリスト」が流行っています。

 

まぁ伝統工芸品に限らず、様々な業界で需要が低迷しておりますから、これはどうしようもない問題ですね。

 

<後継者不足>

伝統工芸品を作っている事業所は、どこも給料が安いので、後継者不足になるのは当たり前です。「ものづくりが大好き」という方でも、実際に働いてみると仕事はきつく低賃金で、すぐ辞めるでしょう。

長い修行に耐え、独立したとしても仕事はありません。唯でさえ伝統工芸品が売れない時代なのに、信用も技術もないところに仕事なんて回ってくる訳もなく……

 

後継者を増やすには、給料を上げるしかないですね。儲かっていて勢いのある会社には、必ず人が集まってきます。ではどうすれば、儲けることができるのか。

それは、以前に投稿した「陶芸で利益を出すには」に書いてあります。陶芸だけでなく、伝統工芸品全般に当てはまる内容です。

 

陶芸で利益を出すには
前回の「陶芸家になるには」の記事で利益を出すのが難しいとご説明いたしましたが、今回は、少しでも利益を出すためには何をすればいいかを書きたいと思います。 これから「陶芸の仕事で食べていきたい」と考えている方の参考になれば幸い...

 

<原材料、道具の調達が困難>

これは本当に大問題ですね。伝統工芸品に使われるような原材料は、限られた資源である場合が多いです。特に深刻なのは、陶石や陶土などの陶磁器原料。焼き物に使われる良質な土は、どこでも採れるものではありません。

採掘し過ぎて枯渇してしまえば、良質な土が採れるところを発見するまで、ひたすらボーリング調査を行わなければならないのですが、当然、予算が限られています。ボーリング調査は巨額の費用がかかるため、そう何度もできませんからね。

それに、採掘する場所が変われば土の性質も変わるので、安定した原料を供給するまでに時間を要し、一時的に産地の生産が止まる可能性も大いにあります。

 

また、原材料や道具を作る人も、減ってきております。陶磁器の場合、窯元の数より原料工場、窯業機械メーカーなどの方が少ないですから、窯元の売上が悪ければ、もろに影響を受けます。窯元は陶磁器を作るのはプロフェショナルですが、原材料をはじめ、器を焼くための窯、電動ロクロ、等々は作ることができません。

重要な、窯の熱量を測る、「ゼーゲルコーン」も国内生産は終了しました。今は在庫分を販売しているようですが、値段が倍以上になっています。「オルトンコーン」という代替品があるので今のところは大丈夫ですけれども……市場縮小に伴い、徐々に姿を消す道具も増えてくるでしょうから困ったものです。

 

(陶磁器原料について)

陶磁器製造に欠かせない原材料の土は大きく分けて、粘土、磁器土、半磁器土などがあり、採れる地域によって色や成分が異なります。
焼き物の産地には、近くに採掘場があり、採掘した粘土や陶石を原料工場に運び、そこで細かく砕いて陶芸用の土を作っています。

・粘土→陶器(土もの)
・陶石→磁器(石もの)

細かく砕いた原料は、水を加えて練ると粘りけがでてきて、可塑性(力を加えて変形させたときその形を保つ性質)のある原料に変わります。1種類の原料をそのまま使うこともありますが、大抵は、歪み、ひび割れが少なくなるようにするため、長石、ケイ石、木節粘土なども混ぜ合わせます。
練った段階では、液体状なのでフィルタープレスという機械で脱水すると板状の土が完成します。

 

【陶磁器製造の主な工程】
成形→削り→乾燥→素焼き→絵付け→施釉→本焼き→出荷
【陶磁器の主な産地】
〔陶器〕・益子焼・笠間焼・萩焼・薩摩焼……
〔磁器〕・有田焼・波佐見焼・京焼・九谷焼……
〔炻器〕・備前焼・信楽焼・萬古焼・常滑焼……

 

伝統工芸を救うには

いよいよ本題です。

私は、伝統工芸を救えるのYouTubeなどの動画投稿サイトだと思っております。なぜなら、これで伝統工芸品が抱えている問題を、ほとんど解決できるからです。

 

『販路拡大』

一番の問題は、商品が売れないことです。生産者が少しでも多く出荷するためには、販路を拡大しなければなりません。ですが、ものを作るのに忙しい職人は、自ら営業に行くことは現実的に困難です。それに、儲かっていない事業所は、広告を出して宣伝する余裕もないので、自社のPRが不足していることが多いです。

YouTubeに動画を投稿すれば、勝手に営業活動してくれるので、自社のPRに繋がります。もちろん、動画を撮り、編集してアップロードしなければならず、手間はかかります。ですが、動画は一度作成すると、自分が消さない限り永遠に残り続けます。(著作権侵害などで消されることもあるようですが)

 

最初のうちは反応が鈍くても、動画を見てくれた個人の方や大企業の購買担当者の方に、興味を持ってもらってお客さんになってくれるかもしれません。

しかしながら、伝統工芸品を作っている人が動画を投稿するのは、とても抵抗があると思います。制作風景なんか公開したら、「商品がパクられるんじゃないか」という心配がありますもんね。でもご安心ください。全てを見せる必要はないです。

 

見られたくないところは編集でカットしてもいいですし、ユーチューバーみたいに喋らなくてもいいのです。日常の制作風景を映すだけで、一般の人がみればめちゃくちゃ新鮮です。だって工房に行かないと見れないものですからね。逆に「これは誰にも真似できない技術だ」ってものがあれば最初から最後まで撮影したものを公開すれば、それだけで信用と信頼が生まれます。

 

『技術・技能の継承』

伝統工芸品の複雑で多岐にわたる工程を、一つずつ動画を撮りYouTubeで公開すれば、それをみた見習いの方が完璧に再現できるとは言わないまでも、動画を元に練習することで似たようなものは作れると思います。

ですので、「自分の仕事を後世に残したい」、「後継者を増やしたい」という方は、積極的に公開すべきです。そんなもん墓場まで持っていったところで、何の意味もありませんし、世の中の為にもなりません。記録を残さないと、一つまた一つと職人の”しごと”が消えていきます。

 

そもそも、伝統工芸に携わる人が熟練の職人になるまで、大概、誰かの仕事のコピーで技術を磨いているのに、自分の仕事を隠し続けるのはおかしな話です。同業の人が仕事場に訪ねてくると、盗まれたくないので作業をストップするなんてことはよくあります。商品をマネされて、自分の仕事がなくなるんだったら、所詮その程度のものだったと、諦めた方がいいですね。

当社で働いている職人さんも、師匠(私の父)が突然亡くなり途方に暮れていましたが、幸いにもロクロの映像がVHSに残っていたので、それをテープが擦り切れるほど見て練習したそうです。もし、映像が残っていなかったら、うちの看板商品も途絶えていたかもしれません。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

伝統工芸品は、生産額がピーク時の5分の1にまで減少していることや後継者不足など様々な問題点があります。

しかし、伝統工芸品の制作動画をYouTubeに投稿すると、以下の問題点が解決するのです。

・知名度が上がり販路が拡大する
・仕事(製法)が残り世の中の為になる
・興味を持ってもらえることで後継者が増える
・見られることで自分も上達する
・地場産業の振興に繋がる

 

他にもいいことはたくさんありますが、これだけでも充分、伝統工芸品を救えます。実際に、YouTubeの動画を見てくれたお客様から仕事をいただいたこともありますよ。

伝統工芸品を作っている方が、もっと動画を投稿すると同業者間の情報交換もでき、業界の発展に繋がります。

現在、身の回りには、機械で作られたものが溢れており、機械化は今後さらに加速していくでしょう。そんな中で、古くから受け継がれてきた伝統工芸品が、人々の心を癒してくれると私は信じています。

 

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